金融安定化策がガイトナー米財務長官から公表されました。概要は、
・金融機関に包括的な資産査定を実施、必要なら貸し出し増加を条件に資本注入 ・財務省、FRBなどが設立する官民投資ファンドで最大1兆ドルの不良債権買い取り ・個人・企業向け融資促進へTALFの枠を1兆ドルに拡大 ・住宅ローンの返済負担軽減と金利引下げへ新たな対策 というものです。市場も個人的にもこの二番目のバッド・アセットを買い取る「1兆ドル」という数字は少ないと受け止めました(TALF枠で合計2兆ドルでも少ない)。NYの株式のトレーダーもヘッドラインの数字を見て「3兆ドル」で無かったので売りのボタンを押したということは容易に推察できます。民間からどうやってカネ持ってくるんだ?という疑問も拭い去ることが出来なかったわけで、市場に不信感が漂い、投げが出る始末。DJIAは構成30銘柄全て安く、381ドル安の下げを演じてしまいました。 とにかくこの間も書きましたが、市場から満額回答が得られなければ催促相場をやってしまうのは致し方が無いわけでして、猜疑心から強烈な失望感を抱いてしまったことになり、その修復は難しくなることはいうまでも無いところです。結局これで時価会計を凍結してしまえば、単なる問題の先送りにしかみえないわけです。 さらに後々思えばTALFの枠を1兆ドルに引き上げる、適格証券をRMBS、CMBSに拡大する、というのは今さらになって、という感も強いです。 TALFは昨年の3月、リーマンもベアーも潰れる前の、いわゆるモノライン騒動の時に、クレジット・クランチを防ぐ目的で作られたものなのであって、現状この枠を大きくしてCMBSなどを適格担保に入れて、資金調達して、それで資金が市中で回っていくだけの「信用」ってものがあるのかどうかも疑問ですね。銀行の資金繰りを改善させる程度にしかなりません。設立当時のTALFのスキームは以下の表の通りです(TALFが発表された時にはこれでやっと、という思いがあったのですよね、懐かしい)。 これをRMBS、CMBSを含めるようにして最大1兆ドルにするというのが昨日発表された新たなTALF活用案です。 債券はクォータリー・リファンディングが始まり、初日の3年債入札の応札倍率は2.67倍と前回を大きく上回りました。旺盛な需要が確認されたとの指摘もあったようです。株式がこれだけ売られている中では逃避買いも誘いやすく地合は相当良かった、ということでしょうね。 皮肉にもこのような結果で「金利が下がってくれた」、というのが昨晩のガイトナー長官の論功だったわけです。 「多彩な執筆陣と本物を見抜く読者が創り上げる」新しい形態の新聞、ビスタニュース 人気ブログランキングへ
by kabu-gion
| 2009-02-11 09:46
| マーケット雑感
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宮地塾:元ファンドマネージャーの宮地鉄工さんが世界の株式・為替・債券・商品相場を解説されております。当方もウィークリーレポートを執筆させていただいております。
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